きっかけ②

アロマセラピストになったきっかけ①の続きです。

前回、読んでくださった方、ありがとうございます。


父の出来事は、私の生き方そのものに大きな影響をもたらしました。

遠い未来を描くよりも、今ある目の前のことを懸命に生きること。

明日の命は決して保障されているわけではないと。

生と死は背中合わせであるということ。

そう考えた時、今、目の前にある1分1秒がとても儚く、大切にしたい気持ちが生まれました。


一家の大黒柱を失った当時、私はフリーのカメラマンをしていました。

いくつかのコンテストで賞をもらったりしていましたが、食べていける程の安定と収入はなく、

カメラマンの道を諦め、化粧品会社へ就職します。

単純に「座って、接客が出来る仕事」という理由で通信販売部のオペレーターを選び、たまたま募集していた会社へ就職。

通信販売部の上司に可愛がっていただき、上司が新しく作った「教育部」というコールセンターオペレーターや美容部員、更に社内、社外すべての教育を一括して承り、私は、テキストの作成、指導、説明会と全国行脚の日々でした。

全くを持って無知だった私は、化粧品成分、解剖生理学、皮膚理論、薬事法の他、人前で話すので、マナー、言葉使い、テキスト作成するので文章の書き方など、ここで徹底的に絞られました・・・

最初は「なんでー」って思っていましたが、これがだんだんと楽しくなっていました。


そんな中、忘れもしない、2/14のバレンタインデー。

出張先の京都伊勢丹で「敏感肌向け化粧品フェア」で肌質チェックや化粧品の説明などで接客をしていた時。

時期的に、花粉が飛び出し、目や鼻に炎症が出始めている頃でした。

ひとりの女性がカウンターへちょこんと座りました。

帽子を深くかぶり、顔にはマスク、そして手袋をしています。

ずっとうつむいていて、様子は全く見えませんでした。


「こんにちは。」

「・・・どうも・・・」とお客様。

「何かお肌にお悩みありますか」と伺ったところ

「アトピーで。」と。

服装は花粉を防御するためだったと納得。

「花粉、飛び始めてアトピー性皮膚炎にも影響ありませんか。」

「もう、どうしたら良いか分からないんです。何をしても良くならなくて」と。

そして、続けて「ここの化粧品、良いって聞いたから。」と。

私が勤めていた会社は、皮膚科医が開発した化粧品で、肌質別にラインナップがありました。

「敏感肌用の化粧品ありますけれど、肌に塗ってみますか」と聞いたら、手袋を外し、手を出してくれました。

手の甲はアトピーで荒れていますが、手の平は炎症はなく塗布することが出来るので、ハンドマッサージをしながら、塗布をしてみました。

ですが・・・全くの無反応。

その時彼女が他の化粧品を見て、「これは何ですか」と聞いたのです。

それは、アンチエイジング用の化粧品で、若い彼女にはおすすめしませんでした。

「アンチエイジング用の化粧品で、若返りのエッセンスがたっぷり入った化粧品ですよ」と彼女の顔の前に差し出したとき、マスクを外し容器に鼻を近づけました。

「わぁーなんていい香り!」と顔を上げ、始めて私に笑顔を見せてくれました。

敏感肌用の化粧品には、香料が刺激となる場合があるので、香りは入っていません。

アンチエイジング用の化粧品には、イランイランやゼラニウムなどの香りが入っていました。


帰りの新幹線の中、たくさんの人の出会いに充実感を感じている中、そのアトピー性皮膚炎の女性は印象に残っていました。

「香りを嗅いだだけで、なんであんなに反応違うんだろう・・・」


この彼女との出会い、そして疑問が私をこの世界へと引っ張りました。


帰った翌日、香りについて調べていると、セミナーがあるのを見つけ、行った先がアロマセラピーの学校でした。

セミナーの1つに「香りと脳の関係」とありました。

「脳!?」解剖生理が大好きな私は、興味深々。

香りと脳の関係性を聞くと、京都伊勢丹で出会った彼女の反応がもの凄く腑に落ちたのです。

話を聞けば聞くほど、面白くて、結局1日学校にいて、色々な話を聞きました。


最後に入学手続きの説明を受けていた時に、なんと、その学校、私が働いていた会社の子会社だったのです。

全然、私は知らなかったのですが、なんだかこの出会いと言い、ちょっと偶然とは思えませんでした。

アロマセラピーを勉強しようと思っていたのですが、マッサージも一緒に学べると聞き、思い出したのが、父の言葉「マッサージ上手だよ。」

「やってみようかな。」と始めてそこで思いました。


ちょうど、父が亡くなって10年経った頃でした。


母は「お父さん、言ってたし、やってみたら」と背中を押してくれました。

平日は仕事、土日は学校の日々。

私が通った学校は、もうなくなってしまったけれど、皮膚科医の先生が関わっているだけに、病院の医師が学校に来て解剖生理を教えてくれるという素晴らしいところでした。

アロマセラピーが医療でも注目されていることをここで初めて知った時、色々な可能性があるかもしれないと思い、夢中になっていきました。


そして、その夢中は今でも止まらない・・・。

香りと身体の関係は切っても切れない。

それは京都伊勢丹で出会った彼女が教えてくれたこと。

様々な人との出会いときっかけが私をこの世界へと引っ張ってきてくれたんだなと思います。

それに感謝の意を伝えるには、言葉ではなくて、私が誠心誠意をもって、今を全うすることだと思っています。


いつかあの世に行った時、父に胸張って会えるように。

そんな自分でありたいです。


読んでくださってありがとうございます。

結局、長くなっちゃいましたね。



Kumiko Ando Aromatherapist

主に、医療施設内で「アロマセラピー+漢方」を融合させた、独自のトリートメントをしています。  漢方・アロマセラピーを分かりやすく、身近に感じられるようなブログや症例を書いています。 たまに、プライベートな出来事も書いています。

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